「……あ……」
大丈夫です。そう言わなきゃと思った。
でも正面からジッと見つめられると、喉がカラカラに渇いて、まともな言葉が出てこない。
だれかに無理やり押さえつけられてでもいるように、ぐぐっと首が曲がっていく。
先生は、しばらく沈黙をつくって待っていた。
けれどわたしから返答が得られそうもないとわかると、ふっと息を吐いて立ち上がった。
「……まあ、なにかあれば言えよ。それ終わったら、勝手に帰っていいからな」
先生が部屋を出て行き、望み通りひとりになった空間。
わたしは背筋を冷たくさせたまま、しばらく手を動かすことができなかった。


