呼吸が整わなくなるし、頭がうまく働かなくなってくる。


「五枚セットでとめていってほしいんだ。全部左端で頼む」


先生はそう言って、積んでいた紙を種類ごとに五つに分けた。

すごく簡単な作業だ。一度の説明で理解できたし、あとはわたしひとりでやれる。


なのに先生はなぜか、見張り番のようにわたしの正面に座ったまま、動こうとはしなかった。

わたしも固まっているわけにはいかないので、先生の視線がある状態で、そろそろと資料作りに取りかかる。


でも、本当に息が苦しい。

変な汗がじわりとにじむし、手先が不自然にふるえてしまう。


お願いだから退室してほしいと、そう願っていたときだった。


「あー……あの、だな。永田」


先生が、さっきの説明のときとは違い、言いにくそうに話を切り出してきた。


「その……なんていうか。学校は、どうだ? 教室で、過ごしにくかったり……そういうことはないか?」

「……っ」


その質問を受けた瞬間。全身からスッと、血の気が引くのを感じた。


すぐに理解した。先生がここにわたしを呼んだのは、資料作りをさせるためだけじゃない。

一対一で話す場面を、設けたかったんだ。


先生は、わたしがクラスに馴染めていないことに気づいている。

クラスがうまくいかないと、先生の責任になってしまう。

明らかに孤立している生徒がいれば、立場的にほうっておくわけにはいかないんだろう。