「永田ー!」

「……っ!?」


SHRが終わった直後。阿形先生が突然、大きな声でわたしを呼んだのだ。


「このあとちょっと、進路指導室に来てくれるか」

「……えっ」

「頼むな。授業で使う資料作りを手伝ってほしいんだ」


わたしの返事を待たず、言うだけ言って教室から出ていってしまった先生。

突然名指しされたことでまわりから視線が飛んできて、あわてて顔をうつむかせた。


な……なんで、わたしなの?

自分のおへそと対面した状態で、オロオロと目を泳がせる。阿形先生とは、ロクに話したこともないのに。


どうして?怖い、行きたくない。けれど、無視なんてできるはずもなくて。

その後わたしは、言われた通りに、戦々恐々としながら進路指導室へ向かった。


「おお。悪いな、永田」


ノックしてからおそるおそる引き戸を開けると、阿形先生はもう中にいた。

長机には、資料らしき積まれた紙と、ホッチキスが用意されている。


「そこ座って」

「あ……はい……」


消え入りそうな声で言って、阿形先生の正面に座る。


でも、座ってすぐさま立ち上がりたくなった。

いくら相手が先生でも、だれかと正面で向き合うのは、わたしにとってはものすごくしんどいことだ。