「センセー!食べ物ってあるの?」
「おー、もちろんあるぞ。去年はたこ焼きとか、巨大わたあめとかやってるところもあったな」
「マジで!?」
その回答に、ワッとわき立つクラスメートたち。
でもわたしは、盛り上がる雰囲気からひとり取り残されて、心細い気持ちにおそわれていた。
通常時の学校は、授業があるから救われている。
けれど文化祭の日は、半日まるっと、ひとりで時間をつぶさなければならないわけで。
どうやって過ごせばいいんだろう。
ひとりきりで見て回るなんてことは、人目が気になってできそうもないし。というか、それよりも……。
膝の上で拳を握って、無意識にくちびるを噛み締める。
それよりも……文化祭には、外部からのお客さんも来るはず。
ということは、中学時代のいじめっ子たちが遊びに来る可能性だって、あるんだよね……?
「……っ」
想像しただけで、ぞわっと身の毛がよだつ。
日々をやり過ごすのにいっぱいいっぱいで、阿形先生から話を出されるまで、文化祭について考えもしていなかった。
どこか、だれも来ない空き教室に身をひそめているしか。
でもそんな教室あるのかな。屋上は、いつも締め切られているし……。
心の中に、猛烈な勢いで黒い雲が立ち込めていくのを感じる。
不穏な予感に息が詰まって、喉が絞られているみたいに苦しくなる。
けれど、それだけでは終わらなかった。


