それは、やり取りを始めて二週間が経過した日のこと。

授業終了後のSHR。担任の阿形(あがた)先生が、バンッと教卓に手をついて言った。


「今から、文化祭について説明するぞー」


阿形先生は国語教師かつ、図書委員の顧問だ。

けれど筋骨隆々の体格だから、文化系のイメージからはほど遠く、どこからどう見ても体育教師に思える。

筋肉は喉まわりにもしっかりついているのか、声がとても大きい。


「入学当初に行事のプリントを配ったからわかってるとは思うが、常和の文化祭の日が迫っている」


教室の隅々まで響き渡る先生の声に、わたしはあっ、と思い出した。

そうだ。常和高校の文化祭は、めずらしい日程で、たしかゴールデンウィーク中に予定されているんだ。

二、三年生が主体で、一年生はお客さんというスタイル……といった感じで、プリントには書かれていた気がする。


呼び覚ました記憶の通りだった。

阿形先生は、文化祭がゴールデンウィーク最終日に行われるということと、一年生は回るだけ、という説明をした。


「当日はもう、ほんとに自由だ。朝の点呼だけはとるが、あとは見学して、終了の放送が鳴ったら各自帰っていい」


先生の言葉に、教室内には喜びのざわめきが起きる。