【心配の言葉を、ありがとうございます。
変なものを机に入れていてごめんなさい。
あなたは、夜間生の人ですか?】
今から少しさかのぼった、四月上旬のあの日。
書くか書くまいか、散々悩んで文字をつづって。わたしは机の中に、またノートを置いて帰ることにした。
するとなんと翌日、新たに返事が書き込まれていたんだ。
【夜間生です。十五歳で、雨夜涼(あまやりょう)と言います。
たぶん、同い年だよね】
その文章を見たとき、わたしはしばらく放心して固まってしまった。
雨夜涼くん。美しい文字の持ち主の名前を、頭の中で何度も唱えた。
予想通り、夜間生の人だった。うっかり泣きそうになっていた。
自分の言葉がだれかに伝わって、その言葉に対して返答をもらえたこと。
かつては当たり前だったそのことが……これ以上なく、嬉しくて。
【わたしは、永田温美です。
高一だけど、もう十六です。誕生日が早いから】
またもやシャーペンをふるわせて、ドキドキしながら書いて帰った。
そうしたらまた、返事があった。
【四月生まれなんだ。俺より五か月くらいお姉さんだね。
誕生日おめでとう。ケーキ食べた?】
【ありがとう! 雨夜くんは九月生まれなんだね。
チョコレートケーキを食べたよ。雨夜くんは、どんなケーキが好き?】