川にも緑がうつり込んでいる。川の水が澄んでいるからこその現象だ。
わたし、今、自然の中に放り込まれてる。非日常ってきっと、こういうことを言うんだ。
「空気が気持ちいいね」
わたしの隣を歩きながら、雨夜くんが言った。
さわやかな笑顔が、緑に映える。今日の雨夜くんは、これまた一段とまばゆい気がする。
太陽も川のきらめきも、全部雨夜くんに向かっているみたい。
見目うるわしい人って、輝きをすべて味方につけるのかな。
「……うん! すごく気持ちいい!」
大きくうなずいてみせると、雨夜くんが歯をのぞかせてほほえんだ。
「永田さん、こういうアウトドアっぽいことも好き?」
「うん! 運動神経は悪いけど、自然の中で何かするとか、好きだよ! あのね、お父さんがまだいたころはキャンプとか――」
答えている途中、雨夜くんが「えっ」と短い声を上げた。
少し遅れて、あっと気づく。
そうだ。わたしまだ、お父さんについて話したことがなかった。
「あ……えと。わたしのお父さん、わたしがまだ小さいころに、亡くなってて」
「そう、なんだ……」
「あ! でもさすがに年数が経ってるから、悲しくて仕方ないとかじゃないよ⁉︎ お母さんとはすごく仲良しだし……」


