バスに揺られること、もうしばらく。目的のバス停に到着して、わたしたちは再び地上に降り立った。
「あ、これかな」
雨夜くんがバス停のすぐ近くに見つけてくれた、【遊歩道入り口】と書かれた看板。
矢印が示しているのは、木々に囲まれた細い道で。わたしたちは川に向かって、その道をくだっていった。
「永田さん、足元怖くない? 大丈夫?」
「うん!……わっ⁉︎」
「はは、木の根っこ気をつけて。肩つかまっていいよ」
雨夜くんの右肩にすがりながら、くだり終えたその先。
幅広の川が、涼やかな音とともに目の前に現れた。
道はさきほどまでのむき出しの地面でなく、きちんと整えられた遊歩道になる。
「ずっと歩いていったら、最後に滝があるんだって」
「へえ……!」
滝なんて、幼いころに一度見たきりかもしれない。
ワクワクがまた増える。ザアアと流れる川の音が、耳を通って、すべての臓器を洗っていくみたいに心地よい。
そして……視界が、見事に緑だ。
深い緑に、やわらかな緑。さまざまな緑が重なりながら目に入って、心を癒す。


