雨夜くんといると、嬉しくてときめいて、切なくて苦しくなる。

巻き起こるこの感情を、なんと名付けていいのかわからない。


はじめての感情にとまどいながら、視線を上げる。

ばちりと目が合って、心臓の数が増えたのではと思うくらいに、胸が高鳴った。


どうしてだろう。

やっぱり今日の雨夜くんは、ハチミツをふた匙ほど加えたみたいに糖度が高い。


「……永田さん」

「は、はいっ!」

「俺もひとつ……永田さんに、頼み事してもいい?」

「えっ」


甘やかな笑みを浮かべて、雨夜くんが言う。

でも甘さだけじゃなくて。その顔には、真剣さものぞいていた。


「今度の日曜。永田さんの一日……俺に、くれませんか」

「……ヘっ」

「仕事が休みだから、一緒に出かけたい。考えてるところがあるんだけど……ダメかな」

「……っ!」


目をじっと見られて、熱が顔に集まる。

まばたきを多くして、ダメじゃないの意味で首を横に振って。


「いっ、行きたい……!」


そう答えたら、雨夜くんが嬉しそうに笑った。