耳を打つのは、甘やかな声。

なんだろう。声も表情も、いつもより糖度が高いように感じるのは気のせいかな。

今までも十分すぎるくらい優しかったけれど、今日はもっともっと、優しさがふんだんににじみ出ているように思える。


「と、とにかくね……本当に、雨夜くんのおかげだよ。ありがとう」


感謝の言葉に、雨夜くんの目が丸くなる。

その目の中に、幸せに満ちたわたしの顔がうつっている。


「ありがとう。雨夜くんがいなかったら……わたし、自信の無さからいっぱい失敗しちゃってた」

「はは、そんなことないよ」

「そんなことあるよ!」


雨夜くんの返しに、せわしなく首を横に振る。


「だって雨夜くんは、わたしにとって神様みたいな存在だもん……!神様っていうか、スーパーマンっていうか……!」

「……ふはっ」


力説するわたしに、雨夜くんが耐えきれないといった風に吹き出す。

そして、まるで愛おしいものでも見るかのような瞳を、わたしに向けて。


「……じゃあ、神様からお褒めの言葉を」


冗談めかしてそう言って、ポンと、わたしの頭に手をのせた。


「よく、頑張りました」

「……っ」


いつだってわたしを包み込んでくれる、優しい声と笑み。

胸の奥が、強くつかまれたように痛くなる。


苦しくなる。でも痛みも苦しさも、悪い感情からくるものじゃない。