ハッと顔を上げる。おばあさんと思われる白髪ショートヘアーの女の人が、居間に入ってきていた。
あわてて、雨夜くんから距離をとる。雨夜くんが立ち上がって言った。
「起きてたの? 降りてきて大丈夫?」
「ああ、大丈夫。さっきまで寝てたけどね。あんなすごい雷落ちたんじゃ、死んでないかぎり起きるよ」
ブラックジョークを言い、ニッと笑うおばあさん。
顔も体も、ひと目で病気だとわかるほど痩せこけていて。けれど瞳の輝きは、失われていなかった。
「……で、その子は?」
その瞳がわたしをとらえて、あわててピッと姿勢を正す。
「こちら、友達の永田さん。今日一緒に、公園でバスケしてたんだ」
「お、お邪魔してます……!」
わたしも遅れて立ち上がり、がばっと頭を下げる。
もとに戻すタイミングがわからず下げたままでいると、おばあさんが「こらこら、頭上げて」と声をかけてくれた。
「そう。あなたが、永田さんね」
深い声が、鼓膜を揺らす。
まるで前から知っているかのような親しみを込めた笑みで、おばあさんはわたしに言った。


