そうするべきなのは、わたしの方なのにな。
言葉も、体温も、優しさも。わたしはいつも、もらってばっかりだ。
「大丈夫だよ。俺ね……今となっては、ここに置いていってくれた母親に、逆に感謝してるくらいなんだ」
「……!」
「祖母は、すごく素敵な女性だから。たくさんのことを学ばせてもらったし……今、働きながら夜間に行ってる環境だって、学びになってると思う。出会えるはずがなかったような人と知り合えて、色々成長できる機会だなって思ってる」
……ああ。
しっかり発された雨夜くんの言葉を聞いて、わたしは自分の目から、さらに涙があふれるのを感じた。
今まで、わたしは数えきれないくらい、雨夜くんの素敵なところを見つけてきて。
そのたびに雨夜くんに、尊敬の気持ちを抱いていた。
でも今は、尊敬のひと言じゃおさまらない。
尊敬の上ってなんていうんだろう。そんなの、日本語には存在しないのかな。
雨夜くんは本当に、なんてかっこいいんだろう。
なんて強いんだろう。つらい環境に追いやられても、受け入れて前を向いて。その上で、他人にも優しくできる。
本当に本当に、すごい人だ。
「あら」
「……っ!」
感動にひたっていると、少し離れたところから、わたしと雨夜くん以外の声が聞こえた。


