そこで、雨夜くんの声が止まる。
綺麗な目が、驚きに見開かれる。
「……っ」
わたしがボロボロと、ばかみたいに泣いていたから。
なんだろう。なんだろう。なんなんだろう。
気がついたら、涙が出ていた。
雨夜くんがこんなに大人びている理由が、わかった気がした。
うまく言えない。でも、悔しくて。
こんなにも才能あふれる雨夜くんが、みずからその道を絶って、大人にならなきゃいけなかったことが……すごく、すごく悔しい。
「……んで……そんな、綺麗なの」
かすれた声が、聞こえた気がした。
頼りない、迷子のような声。ぼろぼろ落とす涙の向こうで、雨夜くんが一瞬だけ、子どもみたいな幼い顔になる。
けれどすぐに、いつもの大人びた表情に戻って。
「永田さんは……やっぱり、泣き虫だね」
励ますように、わたしの手をにぎってくれた。


