昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う


「父親はわからなくて、母親は蒸発して。幼いころから……祖母と一緒に、暮らしてた」

「……っ」


まばたきまでもを忘れて、硬直する。

母親が蒸発、なんて。ドラマの中だけの話だと思っていた。


こんな身近に。それも、雨夜くんの身に起こったことだなんて。


「でも中三の夏に、祖母の病気が発覚したんだ。すぐに治療に入らないと、どんどん進行して取り返しがつかなくなるって……ドクターに言われた。でも治療費がけっこう高額で、そんなお金……うちにはなくて」


くっついているからあたたかいはずなのに、体がすうっと寒くなる。

取り返しがつかなくなるって。それって……。


「祖母は、俺の進路の邪魔はしたくないから治療はしなくていいって言ったんだけど。悪くなっていくのを見てるだけなんて……そんなこと、できるわけないし」

「……っ」

「あきらめたくなくて。だから治療費を稼ぐために、働きながら夜間に通う道を選んだんだ」


ドオン、と次に聞こえた雷鳴は、激しかったときの十分の一ほどの音になっている。

雷雲が離れていっている証。雨夜くんはわたしの肩に手をかけると、ゆっくりわたしの体を起こした。


「……でもね、永田さーー」