守ってくれる優しい腕。ホッとしてドキドキして、真反対の感情が同時に体に巻き起こる。
ほおが火照る。全身が熱い。
耳に流れ込んでくる、雨夜くんの心臓の音。
ドクン、ドクンと刻まれる一定のリズム。
それをしばらく聞いていたら……ずっと躊躇して口にできなかった質問が、自然とすべり出てきた。
「あ……雨夜くん、は」
「ん?」
「どうして、夜間に通うことになったの……?」
物理的に、雨夜くんにくっついているからかもしれない。
だからこのまま心の距離も、縮めたくなってしまったんだと思う。
「………」
返答は、すぐにはもらえなかった。
雨夜くんの心音以外の音が世界から消えてしまったみたいに、辺りは静まり返っている。
そのうちにまた、ドオン、と落雷の音がとどろく。
しがみつく力を強めてしまったところで、雨夜くんが口を開いた。
「うん……どう話したら、いいのかな」
いつも通り優しくて、少し困っていて。それでいて緊張が感じられる声。
このところずっと雨夜くんと会うことを繰り返しているから、わずかな張り詰め具合であっても気づくことができた。
「俺……両親がいないんだ」
今日聞いた中で一番低いトーンの声が、耳を打つ。
雨夜くんの胸におさまりながら、わたしは息をすることを忘れていた。


