賞状の名前を見ようと目をこらしたとき、雨夜くんが「お待たせ」と台所から戻ってきた。
あわてて居住まいを正す。
雨夜くんはふわりと笑って、同じくふわりと湯気を立てるコーヒーを、わたしの前に置いてくれる。
「わ、ありがとう……!」
「いえいえ。この季節だと、熱いものってちょっと微妙かな」
「ううん!嬉し……ヒッ」
弾んだ気持ちのままにカップに触れたら、予想以上に温度が高かった。
驚いて手を引っ込めたら、雨夜くんに少し笑われてしまった。恥ずかしい。
「……あの」
「ん?」
「えっと……そこにある表彰状って。その……全部、雨夜くんがもらったやつなの?」
恥ずかしさをごまかすために、そんな質問を口にする。
隣に座った雨夜くんは、不意をつかれたように目を見開いて。それから若干気まずそうな表情になった。
「あー……飾るって言ってきかなくて」
主語のない言葉が、ポツリと落とされる。
飾るって言ってきかない……お母さんが、かな?
軽く首をかたむけていると、雨夜くんは続けた。
「なんていうか……特別すごいものじゃないんだよ。生徒会長を一年勤めたらもらえたやつとか」
「え……せ、生徒会長……!?」


