「あのっ、雨夜くんは、ミルクと砂糖入りだったよね……!」
「はは、覚えててくれたんだね」
雨夜くんのやわらかい声を聞いて、とても満ち足りた気持ちになった。
……覚えてるよ。
雨夜くんからもらった文や言葉。全部が、わたしにとっての宝物だったから。
今でもそう。宝物は、どんどん増えていっているんだ。
雨夜くんが台所で作業をするのを待つ間。
わたしはお言葉に甘えて、テーブルに添えられたイスに座らせてもらうことにした。
人様の家をジロジロ見るのはいけないと思いつつ、それでも気になる気持ちに勝てずに、チラッと視線を走らせてしまう。
本当に、よく片付けられているお家だ。
こまごましたものが少なく、テーブルの上もすっきりしている。
そしてすっきりしているからこそ、よけいに目立って見える一角があった。
柱時計の真下に置かれた台に並んだ、立派な賞状や金色のトロフィー。
わたしの家には、ひとつも存在しないものだ。


