それをこらえて、お年寄りみたいな動作でヨロヨロとイスに座る。
昨日から心配をつのらせ続けていたから、すっかり気が抜けてしまった。
脱力しながら、一応中身を確認しておこうとノートをめくる。
「……え」
と次の瞬間、声を落として硬直した。
最新のページ。
連続した負の言葉の、最後。
そこに、自分の丸っこい文字とはべつの、流麗な文字が書き込んであったから。
【大丈夫?】
「……っ」
……だ、れ?
さっき覚えたばかりの安堵が一瞬で引いて、全身があわだった。
うそ。うそ、クラスメートに見られた?どうしよう。いったいだれに……!
パニックに陥りかけて、カタカタと手がふるえだす。
でもすぐにふるえは止まった。
ひとつの記憶が、頭によみがえってきたからだ。
『ちょ、キモ! ペンケースあさられてるんですけど!』
それは、一昨日の出来事。
同じクラスの矢崎(やざき)さんが、わたしの斜め前の席で大声を上げた。
矢崎さんは、クラスの中で一番、といっていいほど派手な女子だ。
メイクばっちり、センター分け巻き髪。たぶん、ギャルというくくりに入るのだと思う。
そんな彼女の怒声を聞いて、わたしが肩を跳ね上げている間に、わらわらと数人が集まってきた。