ところがネヴィル様は、そんな生活が楽しいと言う。
 自由でもあるし、心身の鍛練でもある。 この生活と経験がきっと今後に生きるはずだと信じ、不安な様子は微塵も感じられなかった。

 便りには学友の方達との日々や共学ならではの時間の過ごし方が書いてある。
 婚約者のいる令嬢はまず他の殿方と二人きりで親密にはならないし、必ず誰かが側で付き従う。
 それは学校と言えども貴族社会。 身分が上なら下の身分がその者の世話をする。
 つまりは結局、学校でも構図は何も変わらないのだ。

 そんな中、やはり規則を破り、はみ出す者はいるという。
 例えば、婚約者のいる令嬢と殿方が二人きりで密会したり、その気のない令嬢を手込めにしようと画策する連中等がその例。

 そんな所にいて、ネヴィル様は本当に大丈夫なのかとさらに心配で不安になった。

 するとネヴィル様の便りに、こう書いてあったのだ。
【フロタリアも来るといい。 そして俺の側にいて監視でもすれば楽しい学校生活の意味もわかるだろう】

 本音を言えば、楽しい学校生活なんてどうでもいい。
 ただ、ネヴィル様と日々を過ごしたい。 さらに言えば他の令嬢を近づけたくない。
 彼はいつもスマートで優しくて、魅力溢れる方。 どんな綺麗な令嬢が現れて心を奪われるかわからない。
 そう思ったら、その不安の方が勝ってしまったのだ。