図書室の本棚でぶらり探しながら上段へと手を伸ばしていると、私より遥かに大きな手がその先に伸びていく。
 いつの間にか隣にいたのは知らない殿方で、背が高くスラリとした優しい穏やかそうな雰囲気。

 驚いた私は思わず凝視してしまった。

「あぁ、これは失礼。 貴方が探していらっしゃるのに届かないようでしたので」

 本棚から取ったその殿方は、私の手にそっと乗せた。

 初めてお会いする方に突然親しげに話しかけられた。
 親切からの行動ではあるらしいが、誰かに見られたらどんな噂をされるかわからない。

 すぐに第三者的な人を間に置かなければ。
 そこで、私はジャクリンの姿を探した。
 ところが、彼女はどこかに目的でもあったのか姿が見えない。
 周りには数人の男女がいるが、それぞれ読書に夢中で何も気づかない。

 という事は、もしかしたら少しだけ話をしても大丈夫なのかもしれない。