「起きて下さい、フロタリアお嬢様」

「う、ん……眩しい」

「もうお日様はあんなに高い所ですよ。 いい加減に起きて下さい」

「何を朝からそんなに怒っているの? 旦那様が女遊びでもしたの?」

「フロタリアお嬢様、どんな夢を見てらっしゃったのですか?」

「ん……何だったかしら、よく覚えていないわ。 酷く嫌な夢だったような気がするのよね」

「そうでしょうね、私を既婚者のように言うんですから」

「あら、だって先月結婚したじゃないの」

「だから、それが夢だったのではないですか?」

「あ……そうだったかしら」

「全く、お嬢様が夢との区別もつかないほど遅くまで読書ばかりなさるからですよ」

「だって本は楽しいわよ? 色んな世界が見れるのだもの」

「私にはさっぱりです」

「ねぇ、そういえば……なんだか身体が痛いわ」

「大丈夫ですか? 三日後には寄宿学校に入るのですよ?」

「ネヴィル様に早くお会いしたいわ」

「でしたらもっと早く起きましょうね、お嬢様。 あちらでは起こして下さる方はいらっしゃらないのですから」

「それは大丈夫よ。 ジャクリンが起こしてくれるわ」

「その方はお友達ですか? 聞いた事がございませんが」

「あら……変ね。 誰だったかしら」