「優大の出演映画、この間は学園ファンタジーを観たけれど、今日は私、こっちが観たいなぁ」


朝。

美加子と香奈子が出勤したあと、私はまた日向の部屋に来ている。


「こっちって……、ラブストーリー?」


私はほんの少し、身構える。



「大丈夫だよ、笑子ばあちゃん!そんなにイチャイチャするシーンは無いよ!?話の流れもすごく良くてね、泣けるって評判が良かったんだよ!」


そうは言われても……。

私としては、「推し」のラブシーンなんて観たくない。



だって。


なんだか寂しいじゃない。


相手の女優さんにも、きっとこれから嫉妬の目を向けてしまう。



「ねー、お願い。観ようよー、良い映画だからー」


日向が駄々っ子みたいな口調になったことが可笑しくて、
「そんなに良い映画なら」
と、私は日向のベッドに腰をかけた。


眼鏡もかけて、準備万端だ。



日向は嬉しそうにDVDをセットした。