森でジェイと別れ、邸へと歩いて戻った。
 その間、彼の言葉が繰り返し頭をよぎる。

『俺と一緒に来ないかい?』

『私には婚約者がいるとお分かりでしょう?』

『言っただろ? 俺の探し物』

『ジェイとは初めてお会いしましたのに』

『そのはずだが、そうでもないようだ』

『話が見えませんわ』

『来週までに考えておいてくれないか?』

『私にはどうにもできません……』

『俺は君と生きたい』

 ジェイの言葉の意図が掴めない。
 いったい何を探して、何を見つけたと言うのだろうか。
 もしも彼がいなくなったら、私は寂しく感じるだろうか。
 いや、寂しいだけだろうか。

「わからないわ」

 そう呟いて、玄関ドアを開けようとした時だった。

 裏庭の方から声が聞こえて来たのだ。
 それはボソボソと不快感が刺さる話し声だ。

「リリィ様の意識が戻られなければ良かったのに」