「リリィお姉様、来週にはいらっしゃるでしょう?」

「えぇ、ロナウドと行くわ」

「お父様もお母様も久しぶりに会えるのを楽しみにしていますよ」

「あまりにご無沙汰過ぎて、怒っていらっしゃらないかしら?」

「いつも私の持ち帰る話を楽しそうに聞いていますわ」

 ロナウドの王宮での仕事の都合がつかず、やっとホワイト家に顔を出せるのが来週だ。

 すっかり日が経過してしまい、庭に咲く薔薇はピークを過ぎようとしている。

「リリィ様、お客様がお見えなのですが」

 執事が居間のドアをノックし、顔を覗かせる。

「どなた?」

「リリィ様の親しい殿方です」

「ジェイなの? 彼はロナウドの友人ですよ、弁えなさい」

 執事を諭す言い方になったのはジェイを馬鹿にしたからだ。
 彼は立派な貴族であり、ロナウドの寄宿学校時代の友人。

 確かに風貌や振る舞いに貴族らしからぬところがあったとしても、見下す言動は年上の執事だとて許される事ではない。 この邸の主人であるロナウドを馬鹿にするのと同じ意味を持つのだから。

「申し訳ございません」

 執事が恭しく礼をして下がり、私に先立って玄関ホールへと向かう。
 私も椅子から立ち上がり、ジェイを待たせないように急ぐ事にする。

「ごめんなさいね、ロージー。 ちょっと待っていて」