甘い毒に溺れ堕ちて






「──しばらくはカラースプレーで凌いで、後日、通販で買ったウィッグを被るようにしたんだ。でも……」

「……ブリーチした、と」

「……毎日被るたびに、自分を偽っているような感覚になるんだよね。ならいっそのこと、根底から別人になってしまおうと思って」



毛先を指でくるくるといじりながら、染髪した理由を話す藍くん。


茶色でもダメ。ベージュでもダメ。

完全に面影を消すには、遺伝子から遥かにかけ離れた色にするしかなかったのだ、と。



「だからここでは、“高校に上がるタイミングで親が地方に転勤してしまった、父親の友人の子ども”ってことになってる」

「成見、でもないの?」

「うん。名前は考える時間がなかったから、読み方を変えただけ。案の定、『女の子みたいな名前ねぇ』って突っ込まれたけどな」



あくまでも“なってる”のは、3人の時だけ。

父親と2人だけの時は、親子として過ごしているとのこと。