甘い毒に溺れ堕ちて

けど……もう既に、手遅れだった。



『虎珀っ!! 早く彩子(あやこ)さんを追い出して!!』

『母さん、この子は……』

『っ、ばあ……』

『この裏切り者! 恩知らずがぁぁぁぁっっ!!』



憎しみに染まった瞳。尋常じゃない敵意。

俺めがけてグラスを投げつけるその姿は、おぞましい化け物にしか見えなかった。


もっと早く謝っていれば。
感情任せに拒絶なんてしなければ。

ばあちゃんが変わってしまったのは俺のせい。

俺のせいで、父さんから、じいちゃんから、大切な家族を奪ってしまった。



『出ていけっ! 出ていけぇぇぇっっ!!』

『……申し訳ありませんでした。お義母さん』



震える声で謝罪した後、制止してきた父を振り切って家を飛び出した。


逃げても逃げても、手にヒリヒリと走る痛みが、容赦なく現実を突きつけてきて。

自宅に駆け込み、薄暗い玄関のたたきの上にへたり込んで、1人嗚咽を漏らした。


贈るはずだった桜の花のブローチは、1年以上経った今も渡せずにいる。