甘い毒に溺れ堕ちて

「新居に引っ越してから、3年ぐらい、だったかな。ある仕事のオファーが来て。本人に許可取ってないから詳しいことは話せないんだけど……誰もが1度は聞いたことのある有名企業からお願いされたらしくて」

「それが、きっかけで……?」

「そう。大成功してさ」



テレビや雑誌で取り上げられた他、SNSでも注目を浴び、一躍時の人となった母。

その功績は日本のみならず、海外でも賞賛され、現在もなお生みの親として活動を続けている。



「リビングに、いっぱいトロフィー飾ってあるのは見た?」

「う、うんっ」

「あれ、全部ばあちゃんのなんだ」

「おばあさんの……」



復唱した彼女が、「あっ」と何かに気づいたように声を漏らした。

途端に眉尻が下がり、苦しそうに表情を歪める。


引退するまでの数十年間、全国を何度も制覇した祖母。

一方顔出しをしていない母は、大々的に表彰されることはなかったものの、世界中の人を魅了した。


日本一の常連の彼女にとって、嫁が手にした功績は、のどから手が出るほど欲しかったものだった。