甘い毒に溺れ堕ちて

「え、あぁ、えっと……」

「はっ! それとも彼女さん!?」

「あっ、いや、彼女では……」

「母さん、どうしたー?」



しどろもどろになっていると、奥から足音が近づいてきた。

声の主を確認するように顔を傾け、エプロン姿の中年男性を視界に捉える。



「おや、あなたは……」

「こんにちは。私……アイ(・・)さんのクラスメイトの、占部 真彩といいます。期末テストの答案用紙を届けに参りました」



目を大きく見開いた彼……コハクさんにも同様に名乗り、来訪した目的を伝える。



「アイ、さんは……いらっしゃいますでしょうか?」

「はい。暑い中お越しいただいてすみません」



落ち着いた声色でお辞儀をしたコハクさん。

一瞬どう説明するべきなのだろうか迷ったが、意味が通じたようで安堵した。


そのままリビングに案内され、彼から麦茶を受け取る。



「自己紹介が遅れました。成見 虎珀といいます。先週は誠にありがとうございました」

「いえいえそんな。ご無事でなによりです」