「お前さ、ずっと離宮に籠って
何してんの?何か作ってるって
魔力なしの考える事は、わかん
ねーな。ま、こんな所、何んも
ねーんだから、仕方ないかあ」

城下から、隠し通路を使って
藩島城に戻ると、
会いたくない顔に会う。

僕と入れ替わりで
ウーリウ衛星島、スカイゲートの
後継者になった
アリャラス王子。

現カフカス王帝の正統なる
第一王子は、本来なら
皇子と呼ばれるべき奴
だった。

髪と瞳の色だけは
僕と同じ銀月色の髪を
長く波打たせ
金色の瞳は睫毛さえ金色に
発色させている
アリャラスに

僕はそっけなく応える。

「魔充石の研究は、自分には
大事だから。何時、島へ?」

来る事は、
分かっていた。
何故なら僕の成人の儀が
明日、執り行われ
カフカス王帝領からも、
貴族が祝賀に
渡っているのだ。


「昼頃だぜ。お前、出迎えもなし
だろ?ほんと、ムカつくよな。
オレの変わりに皇子になって、
調子のってんのか?魔力なし。
籠りっきりの、ひょろひょろが」

そう
アリャラスは
僕の襟首を片手で掴んで、

「ついでに死んでくれたらな。」

僕の耳元にだけ毒言を吐く。

『アリャラス王子!』

控えていた
アリャラスと僕の護衛が、
慌てて嗜め、
アリャラスは僕の襟首を
突き放した。

「わかってるよ。皇子に不敬を
問われるだろ?うるさいな。」

忌々しそうに
アリャラスは僕に許しを乞う
ポーズをする。

僕の今の容姿は、
表向きの
整った顔でも
ひょろりとした優男風、
式典でフォログラムされる
姿に
メタモルフォーゼしている。
これも
独自にしてきた
魔充石の研究の賜物。

覇王筋肉姿を知っているのは
父上と婚約者家族。
それに
皇子付護衛2人と専属侍女の2人
だけ。
そもそも、
堅固に筋肉がついた身体は
あまり貴族子女には
好まれないらしく、
赤子の頃から
僕に専属で従う
侍女達には不評だ。

「調子には、のっていない。
皇子も神託だ。しかたない」

僕は、
アリャラスの顔を正面に
言い切る。

「自分も、なりたい訳じゃない」



アリャラスは、
見た目も申し分ない
正統派王子の容姿をしている。
貴族達にも憧れられ、
王子とは
斯くあるべきと
侍女達が豪語していた。

その上
魔力を全く持たない
僕とは違い
豊富な魔力を持つ。

そんなアリャラスの口が
歪に持ち上がった。

「ああ、お前、知ってるか?
本土に聖女が降臨したんだ。
て、関係ーないか。お前にゃ
宛がわれた魔力の多い婚約者
いてるもんな。残念だなあ!
オレが聖女と婚約したら、
もしかして、お前から継承権
取り戻せるかもなしれない!」

勿論、
僕がそれを知らない訳がない。
その聖女を
明日の成人の儀に招待したのは
紛れもない

僕なのだから。

「アリャラス。」

何時から、僕とアリャラスが
こんな風になったか
など愚問だ。

僕は
これ以上、お互い話す事は
ないとばかりに
アリャラスの横を
通り過ぎながら、
今度は
僕がアリャラスの耳元に
己の計画を
囁いた。

「聖女は、自分がもらう。」