でも一方で。
僕は誰かを信用することが怖いと思っていた。
起業する前に勤めていた会社は、裏切りが横行するようなところ。
完全に心を許してしまえば、いつ足元をすくわれるかわからない。

そんな経験をしてきたからこそ、僕の命である会社の運命を誰かと共にする……ということを、心のどこかでは否定していた。

助けてもらえ。でなければ死ぬ。
という他人の声に対して、僕の心は、誰かに裏切られた時の方が死ぬ、と、応える。

そんな毎日の葛藤があったなど、全く知らない彼女から
「死ぬわけじゃないでしょう」
という言葉が出た。

僕の心と彼女の考えが、運命的に繋がったとは言わない。
意味ではなく、言葉そのものが、僕をはっと目覚めさせた。

そうだ。
これが失敗したから何だというのだ。
失敗しても、死にはしない。
失敗しても、取り返せばいい。

僕は彼女との面接の中で、起業する前に抱いていた気持ちと野心を思い出した。