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クラス内でもそれほど友人が多いわけじゃないし、女子にもてるわけでもない。


どちらかといえば黒縁ネガネの奥の目が気持ち悪いなんて、陰口を叩かれているタイプだ。


そんな太一と私が一緒にいれば攻撃は更に悪化するに決まっていた。


下手な噂を流されて、イジメは広範囲に広がっていくかもしれない。


太一がよく私のことを気にかけているのは知っていたけれど、その理由もわからなかった。


太一に助けを求めたこともないし、助けられたいと思ったことだってない。


もしかしたら太一は私のことが好きなのかもしれないとは思うけれど、ちゃんと告白されたことがないのでこっぴどく振ることだってできない。


結果的に今日みたいなことが起こるんだ。


「僕がなにか悪いことをしたなら謝るよ」


太一は眉を下げて本当に申し訳無さそうな顔でいう。


それがどこか演技じみて見えて私は足元へ向けて唾を吐いた。


そのときに右頬に唾を吐きかけられたことを思い出して、私は手の甲でそれを拭った。


そのまま何も返事をせずにあるき出す。


太一が後ろからなにか声をかけてきたけれど、それは雨音によってすべてかき消されていったのだった。