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「私のせいでごめんね」


教室へ戻ると泣きそうな顔の多美子がいた。


私の机の上には多美子のお弁当箱がのせられていて、まだ手つかずだ。


一緒に食べるために待ってくれていたみたいだ。


昨日まではそんな子ひとりもいなかったから、傷の痛みなんてすぐに忘れてしまった。


「別に多美子のせいじゃないよ。それよりお腹へった。お弁当にしよう」


私は早口にそう言って、自分の席に座る。


多美子もおずおずと自分の椅子を持ってきてそこに座った。


「多美子のおかずおいしそうだね! ひとつ交換しようよ」


「いいよ。なにがいい?」


「タコさんウインナーかな」


「じゃあ私は卵焼き」


こんな風に友達をお弁当のおかずを交換し合うのが憧れだった。


私には無縁な景色だと思っていた。


「ねぇ、本当に大丈夫だった?」


食べている途中で多美子の視線が私の手のひらへと移動した。


「これくらいどうってことないよ」


そう言って手を握ったり開いたりしてみせると、さすがに痛んだ。


でも大丈夫。


もう復讐の準備はしてあるんだから。


それに、イジメられればイジメられるほど、あいつらにやり返すことができるんだ。


こんなに楽しいことはない。


思わず笑顔になる私を見て、多美子は安心した方に微笑んだのだった。