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そのたびに唾が飛んできて顔をしかめる。


「そんなこと……ないです」


これは本心だった。


由希が勉強できるかどうかなんて私には関係なくて、ただ由希の唾がもっとキレイなものならいいのにと漠然と考えていた。


「嘘つけ!」


由希が怒鳴ると同時に拳を振り上げいた。


握りしめられている由希の手が私の頬を殴りつける。


目の前に火花が散って真っ白になった。


ついで痛みを感じ、そして視界に色が戻っってくる。


肩で呼吸をしている由希の姿が見えて、その隣で目を見開いて驚いている夕里子の姿が見えて、2人の後ろで手鏡から視線を外して私を見ている真純が見えた。


由希は親の仇とでも言わんばかりの鬼の形相で私を睨みつけていたし、真純は能面のように無表情だ。


私は殴られたことがショックでそれらを見てもなにかを感じ取ることができなかった。


痛いとか、憎いとか、そういった感情が襲ってくるのは随分と遅かった。


「なにしてんだ!」


裏返った悲鳴のような声が聞こえてきて3人が同時に振り向いた。


私は壊れたおもちゃみたいにゆっくりと声の方向へと視線を向ける。


そこにいたのは太一だった。


太一の顔は真っ青で、両手を体の前で握りしめてガクガク震えている。