雨がふっていて、学校の体育館裏はジメジメと湿気が溜まって肌はベタベタとして心地悪い。


体育館内からは部活動に勤しむ生徒たちの声が聞こえてきていて、それは無駄に元気ではつらつとしていて、今の私を更に追い込む要因となっていた。


「きったね」


つい先程私をつきとばした赤沼由希がつばを吐きかけてきて、それは泥まみれになった私の頬に飛んできた。


生ぬるくて嫌な感覚が右頬にあたり、私はその勢いで由希を睨みつけた。


「なんだよその目」


由希は目の前にしゃがみこんで私の前髪を鷲掴みにした。


痛みがかけぬけて顔をしかめるが、由希のバカ力は緩まない。


由希がその状態のまま立ち上がったので、私も一緒にたちあがることになってしまった。


白いブラウスには雨でドロドロに溶けた土汚れがこびりついている。


「ほんと、目つき悪いよね」


そう言ったのは由希の仲間での角田夕里子だ。


夕里子はベリーショートの髪の毛を誇らしげに揺らして私に近づいてくる。


女性の命とも言われる髪の毛をこれほど短くカットし、それでもこれだけ余裕のある笑みを見せている夕里子は本当に自分に自身があるのだとわかった。


「その目が恐いんだって、真純がいつも言ってんじゃん」


夕里子にそう言われて、私は由希に前髪を掴まれたまま2人の後方に立っている大友真純へ視線を移動させた。


真純は2人のやっていることも私の現状もあまり興味がないようで、さっきからずっと手鏡で自分の顔を確認している。


雨の中そんなことをしても対してきれいにはならないだろうと内心思うが、もちろん私はなにも言わない。