「じゃ、そんなお前が元気になれるように、ちょっと寄り道するか」
悪戯っぽく微笑んで、阿古羅は言う。
「え? 寄り道?」
「お前んち行こうぜ。まぁそうはいっても、離れたところからクソ親見るだけだけど」
「いい‼」
慌てて声を上げる。
父さんに見つかったらどうするんだ。
「そんなこと言わずに、行こうぜ? いいもん見せてやるから」
阿古羅の強引さにおされ、俺は運転手に家の住所を告げた。
阿古羅は俺の家から少し離れたところにある公園の前で、運転手にタクシーを止めるように言った。
公園は中央に滑り台があり、入り口のそばにブランコとジャングルジムがあった。
「おお、ジャングルジムあんじゃん! 滑り台とかもあるな! ちょっと遊ぶか?」
歯を出してにやにやと笑って、阿古羅は言う。
「……遊ばない。なんでここに来ようなんて言ったんだよ?」
「今に分かる」
阿古羅がそう言った直後、家から怒号が聞こえた。
「あいつ……許さない! ぜったいに見つけて殺してやる!!」
父さんの声だ。
思わず身震いして、俺は小さく縮こまる。
「大丈夫。あいつからは俺が守るよ」
阿古羅はそう言って、笑って俺の背中を撫でてから、ジャングルジムの上に登った。
「阿古羅……」
その言葉を信じていいのかわからなくて、俺はだだ阿古羅を見つめることしかできなかった。
「お前も登れよ、海里」
ジャングルジムの頂上にいる阿古羅が、身を乗り出して手を差し出してくる。俺はそっと、阿古羅の手を掴んだ。
「よっと!」
阿古羅は声を出して、俺の身体を頂上に上げた。
ジャングルジムの上では、家の様子がよく見渡せた。
父さんが俺の部屋のベランダで、忙しなく煙草を吸っている。
俺は怖くなって、父さんから目を背けた。
「海里、目を逸らすな。見方を変えろ」
「……見方を、変える?」
阿古羅を見つめて、俺は聞き返す。
「おう。お前は今、生まれて初めて父親より優位に立ってんだよ。そう思って父親を見たらさ、これがいい景色に見えないか?」
阿古羅はそう言って、父さんを指さす。
もう一度父さんを見ると、涙腺が緩んだ。



