朝、目が覚め起き上がった。

身体がだるくて会社に連絡し、休みをもらった。

彼女が死んだことは彼女が以前勤めていた会社にもすぐに広まった。

彼女がこの会社で働いていたとき、誰よりも彼女が大矢を慕っていたことを知ってる者は多く、大矢の心中を察した。

『大丈夫か。………気を落とすなよ』

上司にそう言われたが、追及されないと察した大矢は適当に答えて電話を切った。

ベランダに出て、タバコに火を付ける。

「夏君、送ってくるね」

「………うん」

幼稚園に通わせている1人娘を園まで送る為、大矢の奥さんがベランダに座り込む大矢に声をかけた。

「パパー!行ってきまーす」

「うん、行ってらっしゃい。気ぃつけて」

娘が玄関で靴を履いている間に奥さんがまた大矢に話しかけた。

「夏君、会社どうした?」

「……休んだ」

「……そっか。今日このまま実家に行ってくるね」

専業主婦の奥さんが車の鍵を持って、出て行った。

風に煽られ、タバコの煙が空へと昇る。