タクシーの中ではしゃいでいたら
少し睡魔に襲われた。


「…なんか…眠くなっちゃった。」

「寄り掛かっていいよ?」

「いいの?」


変装してるから大丈夫かな…

今日は思い切り楽しみたいから
帽子、マスク、サングラス…特に念入りに変装したんだ。


運転手の様子を伺いながら、ひまりちゃんの肩に軽く頭を乗せた。


「なに?」

「私ね、ジュンちゃんの匂い…大好き。」

「変態…?」

「ふふ。」


ばかみたいだけど
すっごい幸せ。


あったかい。


ひだまりにいるみたい。


「うそだよ。俺もひまりちゃんの匂い好き…俺のが変態っぽいな。」

「…かな?」

「こら。もう寝ちゃえば?」

「う…ん」


昨日もたくさん寝たのにな…

ひまりちゃんの肩はあたたかくて、いい香りで眠気を誘う。


幸せだ。



…この数日後

あんな事が起きるなんて
この時の俺たちは
知るよしもなかった。