「メルちゃん、今日もいいにおいね」
「はい! ベーグルと言ってふわふわもちもちなんですよ」
「楽しみ〜」
エミリーさんとオスマンさんは厨房の椅子に座ると、ベーグルを一つ食べはじめた。
「さっき、ギルが来た? ギルの馬が見えたけど」
「あ、はい。でもオスマンさんとエミリーさんがくる少し前に行ってしまって……」
「そうなの? ふふっ、メルちゃんに会いに来たのかしらね」
「あ、明日王都に行こうって誘ってくれました」
ギルバード様とは、私が部屋から出てきてとても感謝された時が初会話だった。それから厨房で働けると決まった時まで、ほぼ毎日お昼には会いに来てくれていた。