オスマンさんの優しい声が聞こえて私は頭を上げた。


「確かに心配したよ。でも、メルちゃんは出てきてくれた。それだけで十分なんだよ」

「オスマンさん……ありがとうございます」

「あぁ」


 オスマンさんはそう言うと、優しく笑った。


「はじめまして、メル殿」


 えっと……この人、もしかして。あの時『ヒール』をかけた怪我をしていた人?


「私は、王宮にて騎士をしているギルバート・セダールント。あの日助けていただき誠に感謝申し上げる。」

「あっ、あの時の……私はメル フタバです」


 オスマンさんに似た茶色の癖のある髪に空のような青色の瞳を持つ男性。


「ギルバート様、私はただオスマンさんの言葉に従っただけです……それに殿はやめてください」

「では、メル様と呼ばせて頂きます。私のことも、ギルバートとお呼びください」


 口角を上げ笑った顔はエミリーさんに似ていた。


「はい、ではギルバートさんと呼ばせて頂きますね」

「あぁ、よろしく頼む」


 ギルバートさんはそう言うと、王宮にある寄宿舎へ帰って行った。