ライラには返事するが「一人になりたい」と言うだけ。数日前まで笑顔を見せてくれたのが夢だったように思える。


「あの、旦那様。これメルちゃ、メル様に作ったんです」

「それは……?」


 料理人のアルベルトは「前に賄いで作っていただいたんです」と笑みを溢した。


「……君はメルちゃんと仲がいいのかい?」

「仲がいいというかお師匠さまみたいな感じです」


 メルのことを話すアルベルトは目をキラキラさせながら話していた。


「メルちゃんの部屋に案内しよう。それは……君が届けてくれないだろうか」

「えっ? 俺ですか? ですが、未婚のご令嬢の部屋に入るのは……」


 アルベルトは、一度躊躇ったが旦那様の表情で「わかりました」と頷いてしまった。