「やはり、聖女だからか……?」
「それはまだ分かりません、聖女だと言い切れる証拠もございません」
「オスマン、聖女様を頼む。何か必要ならば言ってくれ」
陛下はそう彼に言うと何かを考え込むような表情になった。
「御意」
オスマンはそう答えると玉座の間を去った。
***
「旦那様、お帰りなさいませ」
オスマンが公爵邸に帰ると、もう二十時だった。
「ただいま……」
出迎えてくれたのは妻のエミリーと休暇中のギルバートだ。
「メルちゃんの様子は変わらないかい?」
「ライラから聞いた話ですが、まだ部屋にも入らせてもらえないとのことです」
「えぇ、私も外から声をかけてはみたんですが返答すら返ってきませんでした」