しばらくは、お互いに賑やかな街並みを楽しみながら歩みを進めていた。

その時。


「ほら、リック!もうすぐ17時の鐘がなるぞ。早く家に帰らないと母さんに叱られる」

「待ってよ、兄ちゃん!」


パタパタと、横を駆け抜けていく幼い兄弟の会話が耳に入ってくる。


…そろそろ、約束の時間だ


「あの、エル…私、そろそろ帰らないと」

「そうだね。もうこんな時間か」


楽しい時はあっという間。

西の空をみると、日が沈みかけており、後数刻もすれば暗くなるだろう。


…ノエル、今度はエレノアとして、貴方と出かけたいわ。


「それじゃあ、エル、元気でね。今日はありがとう。好きな人と上手くいくことを祈ってるわ」


「こっちこそ、君にそう言ってもらえると心強いよ。ノアも元気で」


握っていた手をスッとお互いに離す。


「さよなら」


私はポツリと呟き、ノエルに向かって小さく手を振った。


そして、そのままくるりと踵を返すと、足早に馬車の待つ方向へかけていったのだった。