*


それから一年後――。


結月とは一応順調。……まだ唯人と同じ好きとかじゃないかもだけど。


高校に入ってからも続けた美術部のほうも順調。




結月は『花恋と同じ高校がいいっ!』って言って勉強を頑張ってた。

そして無事合格。


……そしてそして今日が結月――と、その同期たち――の入学式。



「花恋ーっ」


「結月!入学おめでとうっ!!」


「入学おめでとうのキスは?」


「ちょ、何言ってんの?!」


今みんな見てるからね……。



*



「ちょっと花恋っ!!」


「な、何?」


「何?じゃないってば!!」


入学式が終わり教室に戻って席に着いたら、朱莉(あかり)――高校でできた一番の親友――が開口一番そう言った。

……ちょっと機嫌が悪そうなのは気のせい?



「あんた彼氏いたの?!」


「い、言ってなかったっっけ……」


「言われてないわ!!」


「すみません朱莉さんっ、以後気をつけるんで、命だけは……っ」


このままだといつやられるかわかったもんじゃない。



「あたしよりもさぁ……とりあえずこの学校の男子に謝りなさい!」


えぇ、私何もしてないよ……?

――気づかない間になんかしちゃってたのかな?!


ええ わかんないっ!!


「な、んで?」


素直に聞いてみる。


「男子にあれだけ期待させといて……花恋ってほんと無自覚だよね」


「期待?」


「この学校に彼氏っぽい奴いないからワンチャンいけるかも!ってみんな言ってたよ」


わ、ワンチャンって……。


「だって、恥ずかしくて言えないもん、彼氏います なんて」


「と、り、あ、え、ず!――みーなさーん!この子、如月花恋には彼氏がいますからーっ!諦めたり、なんかしら伝えたりするなら急がないとですよーっ!」


ちょ、ちょ、朱莉?!何言ってんの?!

朱莉の声大きいから二年生全員にはたぶん聞こえちゃってるよ?!


ていうか、みんなそんなに騒がないで!!恥ずかしすぎる!!


「如月さんっ俺、如月さんのこと好きです!」


「俺も!!」


「僕のほうが好きだよ!」


「入学式の日からずっと片思いしてました!」


「彼氏がいたとしても諦めないから!」



えぇ……こんな一度に言われても……。

少なく見積もって30人くらいいる。いや、もっとかな。


「ほら花恋!まとめて返事しちゃいなよ」


あ、朱莉っ!誰のおかげでこんなことに……っ!


そんな軽いことはできないよ……っ



「え、えっと……ご、ごめんなさい……。私、その、彼氏がいるので……」


言って逃げた。こんな注目浴びるの、得意じゃないし……。


人気のない非常階段まで来た。




「――モテモテだね、花恋」


え――