*


唯人のいない世界は、モノクロで生きている感覚もなかった。



「はぁ……」


「もう、花恋ったら最近それしか言ってないじゃん。ていうか、そもそも発言でも
ないよね。……気持ちはわからなくもないけど」


今度は夢愛がため息をついて、


「花恋、話せる状態になったら言ってよ。どんなことも聞くから」


あぁ……なんていい友達を持ったんだろう。



まあ、あと数ヶ月で高校生だし気持ち切り替えないとね。



*


時はどんどん過ぎて、ついに卒業式の日。


「夢愛ぁぁぁ」


今度はちゃんと夢愛に抱きついて、号泣。


「花恋、また、遊ぼうね。ずっと、親友だよ」


二人で号泣しながら、友情を誓い合った。


*


「如月先輩っ!」


走ってきたのか、すごい息が切れている。


「お、大崎くん?どした?……絵の具なくなった?!」


「違いますよ……こんな時に」


まあわかってたけどね。つい、癖で。


「うん。冗談だよ。で、どした?」



「――先輩。ずっと好きでしたっ!!ていうか今も好きです!」


……え?


「わ、私っ?!」


「えもしかしてですけど……気づいてませんでした?」


当たり前じゃんっ!思いっきり頷く。


「先輩って、鈍感なんですね」


「それ唯人にも言われた!……とかいう話ってしないほうがいいよね、ごめん」


いくら私でもそれくらいの常識はあるんだから。

他の男子の名前はあんまり出さないほうがいいよね。


「いや、いいんですよ。で、返事は?」


「い、今ぁ?!」


「だって先輩卒業しちゃうじゃないですか!」


たしかにそうだけど……。

まだ、心の中に唯人がいるの。



「えっと……その――ま、まだ同じ気持ちじゃないと思うけど……いいよ」


いつか同じ気持ちになるかもしれないし。


唯人のこともちゃんと忘れられるかもしれないし。



「ほんとですか!!やったぁ!!」


大崎くんは思いっきり抱きついてきた。


「絶対先輩に好きになってもらうから」


「う、うんっ」



抱きしめられたのは、カップラーメンが作れちゃうんじゃないのってくらい、短いような長いような時間だった。



「先輩。下の名前で呼んでよ」


「え?!」


離れたかと思ったら今度は何言ってんの?!


下の名前で呼べるのなんて唯人くらいだよ……?!


「ゆ……づ、き……?」


「なんですか、花恋先輩」


「先に言っとくと……私、今まで誰とも付き合ったことがないの」


「俺が一番?!やったあ!」



「よ、よろしくね、結月」


「はい!」


*


それから十数人に告白された。

……彼氏――結月がいるからって全部断ってるけど。



「……もっと夢愛と話してたいのに」


「仕方ないって。花恋はほんと人気なんだから」


「でも……私、一人も『この人私のこと好きなんじゃないかな』なんて思わなかったよ?なのにみんな、『気づいてくれていると思ってた』って……」


「それは花恋が鈍感だからね……」


もうっ!みんなそう言うじゃん!――てことは私って本当に鈍感なの?!