*


修学旅行一日目の夜。私の苦手な肝試しだ。


ペアはくじで決めることになり、そして私は唯人とペアに。



「怖くない……きっと怖くない……」

そう自分に言い聞かせながら前へ進む。


「花恋って、もしかしてこういうの苦手?」


「そ、そんなわけない!って、きゃあ!!!」


思わず唯人の腕にしがみつく。



「素直になればいいのに〜。まあ、すっごいビビってんの伝わってるけど」


涙目になりながら唯人の顔を見てみる。――全然ビビってない。
ていうか……


「唯人、熱ある?」

顔赤いし。


「その質問何回目?」


ええと、何回目だろう……。数えられるだけで――



「いや、数えろって言ってるんじゃない。ていうか、やっぱ花恋って鈍感だよね」


「だーかーらー!私は鈍感なんかじゃ――」

言い終わる前に抱きしめられていた。




「――花恋は鈍感だよ」




それだけ言って、離れて、先に行ってしまおうとする。

私は驚きで動けなかった。



「何してんの、おいてくよ」


気がつけば唯人はいつもの調子に戻っていた。


「わ、私、一人じゃ進めない……!お願い、一緒に行って」


素直じゃん、と行ってこっちへ戻ってきてくれた――そもそもそんな進んでないからたいした距離じゃないけど――。


「ありがとっ」



これがいわゆる『吊り橋効果』なのかわからないけど、
私の中に新しい感情がうまれた。



――それが、『恋』


*


その日の夜――ていうか肝試しのときも夜だったけど――肝試しでのことを、全部夢愛に話した――唯人への想いも。



「唯人は私のことどう思ってるのかな……」


「え、ちょっと待って?え?本気で言ってる?」


そうだけど……と頷くと、夢愛はため息をついた。


「はぁ……こりゃ苦労するわ……」


え?唯人は私のこと好きじゃないってこと……?



「あ、ああ、こっちの話。花城くんのことちょっと狙ってたのになぁ。もうこの試合は終わったようなもんだよね」


「ど、どーゆーこと……?」


「ま、まあ、本人に聞くのが一番だよ」


「無理無理!!できないよそんなこと!」


「へえ、じゃあ私に取られちゃってもいいんだ?」


もう!夢愛の意地悪っ!


確かに本人に聞くのが一番だとは私も思うけどさ。



「――よしっタイミング見計らって聞いてみるっ!」