恋を教えてくれたのは君だった。

*


後輩たちの面倒をある程度済ませ、自分の作業に取り掛かろうとした時……。


「――花恋って美術部だったんだね」



花恋と呼ぶのはこの学校に数えるほどしかいない。そしてその中で私が美術部であることを知らなかったであろう人物はただ一人――。


「唯人!どうしたの?……あ、鈴木先生なら今会議中で……」


「え……もしかして俺の自己紹介聞いてなかった……?」


「聞いてたよ!名前は花城唯人で、趣味は、絵を描くこ――」



あ、なるほど。つまり――


「入部希望者?」


「正解」


やったぁ!!部員増える!! とガッツポーズ。



「じゃあ正式なのは置いといて……。今いる部員を紹介するね!」

……まあ、今は私含め三人しかいないけど。



「まず大崎くん。二年生で、拗ねた顔は可愛くて賞をよくとるすごい人ですっ」


「え、か、可愛い?!本気で言ってます?!」


「え?もちろん。言ったことなかったっけ?……ま、いっか」


話を無理矢理終わらせて、無言で 挨拶しろの圧をかける。


「あ……えっと、大崎結月(ゆづき)です。お願い、します……?」


うん、まあ、よしとしよう。


「うん。よろしく」



「次に雛ちゃん。漫画描くのが好き、なんだよね?」


「はい。あ、でも読むのも大好きですっ!!」


「俺あんま漫画読まなくて……。あ、でも今度おすすめあったら教えてよ」



イケメン男子くんと後輩天使女子ちゃん――そして見つめ合う二人……これって恋がはじまるってやつでは???



「花恋ー?」

「「如月先輩?」」


三人の声が重なる。あ、いけないいけない。



「ごめんごめん。てことでラスト!我が美術部の部長の紹介です!」


「――あ、花恋は大丈夫」


ええーー。



*


「――花恋って大崎くんって子と仲いいの?」


いつも通り一人で帰ろうとしたら、何してんの?と訝しげな目で唯人に見られ、
何故か一緒に帰ることに。


そして今は途中にあったカフェに寄っている。



「大崎くん?普通の先輩後輩の関係じゃない?」


「そっか。大崎くんもそう思ってる?」


「いやよくわかんないけど……どうかした?」



大崎くんが何かあったのだろうか。


そんな疑問が伝わったのか、


「あーいや、なんでもない。忘れて」


なんにもないって顔じゃないけど……。まーいっか。



「ここのパンケーキ美味しーっ!!最高……!!」


今はもうパンケーキに夢中で他のことは頭にない。


ラストに取っておいた苺を一口で。


「んー、幸せ!」


美味しすぎて思わず笑顔になると、唯人は何故か顔を赤らめる。



「よ、よかった。ここ一昨日見つけて気に入ったんだよね」


唯人はそう言いながら視線を逸らす。――顔は赤いまま。



「唯人、熱とかある?家に帰ったほうが――」


「え、もしかして花恋って鈍感?」


「はあ……?!人が心配してるって時に何よその言葉っ!!てか鈍感じゃないし!」


信じらんない。


こっちは少し不機嫌なのに、唯人はやっぱ鈍感だ、と笑っている。



――その笑顔に少しドキッってしたのは本人には内緒。