*


私が部長を務める美術部は週に二回、水曜日と金曜日にやっている――一応毎日行けるけど。

部員は18人だが実際はほとんどが幽霊部員で、活動してるのは5人といったところだ。



「如月先輩〜」


「どうしたの、大崎(おおさき)くん」


二年生の大崎くんは、部活に毎日顔を出している。そして描く絵がすごい。賞をよくとっている。



「この絵の具がなくなっちゃって〜。これ、まだないっすか」


「たぶん準備室にあると思うから探してみるね。ちょっと待ってて」


準備室は私か鈴木先生――美術の先生であり、我が美術部の顧問――しか入れないのだ。


「えー。俺も探す」


言うと思った。ていうか、このやりとり毎回やってるよね。



「ダメ。準備室は鈴木先生か私しか入れません」


「……ケチ」


「ケチで悪かったわね。ていうか、先輩にケチって言っちゃダメでしょー?」


「はぁーい」


拗ねた顔がちょっとかわいいから、このやりとりが飽きることはない。



*



「如月せんぱぁ〜い!!」


「どうしたの(ひな)ちゃん」



一年の野崎(のざき)雛ちゃんは、大崎くん同様、毎日部活に顔を出している。

油絵とかではなく、漫画をひたすら描いている。――もしかして、漫画描く紙がなくなったのかな?


「か、紙が、なくなっちゃって……。せっかく、今いいシーンなのに……」


予想が見事的中してガッツポーズしそうになるのをおさえる。


「今ね、鈴木先生が会議中だから……あ、主事さんに言ってみようかな」


ありがとうございますっ!!と今にも土下座しそうなくらいの勢いで頭下げられる。――そろそろ慣れるけど、最初はすごく驚いた。