*



「花恋……?」


「唯、人」


「あーやっぱそうだったんだな、もうわかりきってるから、返事はいいよ。――じゃあな」


早口で言って去ってしまった。



何も、わかってないのに……っ



「……っ」


「ごめんな」


何が言いたいかはわかった。


だから私は

ううん、そんなことない、と首を横に振る。



「違う……っ、大丈、夫」


「――じゃあなんで泣くんだよ。友達の前で無理すんな、わかるんだよ」


優しく抱きしめられる。


「うう……っ、唯人っ、唯人……」


なんでよ、また……また、会えたと思ったのに……。今度こそ伝えようって、思ってたのに。


私の好きな人は、唯人なのにな……




*



早く誤解だって言いたかった。

隣の席だし朝伝えようと思った。


なのに、唯人は頑なにこっちを見ようとしない。

いつも返してくれる挨拶が、今日は無視された。



「はぁ……」


「花恋!夫婦喧嘩でもしちゃったの?!」



ふ、夫婦って……それ以前に、


「付き合ってもいないですし……」


「あ、そうだったの。で、何があったの?この朱莉様に言ってみなさい」


あぁ、朱莉が女神のよう……!

こんな心強い友達がいたんだね。


「結月と歩いてたら、唯人に会って……多分、誤解された。
まだ付き合ってるって。でも、誤解解こうにも無視されるし……。
絶対嫌われた。告白の返事保留にしてたからだ……」



「え、ちょ、告白!?告白されてたの?!唯人に?!」


「こ、声大きいって!」


誰かに聞かれたら大変だ……。


「ごめんごめん。うーん、誤解解くしかないよね。どうすれば……あ!じゃあさ!――」



*