「花恋、ちょっといい?」


「ど、どうしたの唯人」




「――話がある」


真剣なその表情に、思わずドキッとする。




連れられたのは空き教室。



「――返事、まだ?」


返事って告白のことだよね。



――自分の気持ちに素直になるべきだよね。



「え、えっと、私――」


「あーいたいた唯人!先生が呼んでるよ〜」



タイミング……悪すぎるよ……。




「わかった今行く――返事、後で聞くから」


「うん……」



*



返事のタイミングを逃したまま、今日は結月の絵を観に来ている。



すごい大きい建物。ここに結月の絵が展示されてるんだ……。




結月の絵は、入り口から一番遠いところに飾られていた。


タイトルは――『大切な人』 結月らしいタイトル。



ていうか、この絵の人って、私……?





「花恋」


後ろから声がした。そこにいたのは――


「……結月」 



「どんな関係だって、俺の一番大切な人は花恋だから、ってこと伝えたくってさ」


いきなりんなこと言われてもビビるよな、と付け足す。



「ううん、私にとっても結月は大切な人だよ」



この瞬間、ほんの少し曖昧な関係から、本当の『友達』になれた気がした。



*



その後は一緒に他の展示を観た。今は帰り。



「それにしても結月の絵はすごいなぁ、毎回思う」


「まあな」


「結月、謙遜ってのを知らないのね……」


たしかに、自信持てるくらいすごいんだけどさ。



「今度遊びに行こーよ」


「いいね、どこ行く?」


「……ゲーセンしかでてこないや。花恋の行きたいところで」


結月がゲームセンターに行くのはちょっと想像つかない。
少し意外だな。暇なときは絵描いてるイメージしかなかったから。



「そうだな、ショッピングモールと――」


か、と言い終わる前に、すれ違った人と目が合い言葉を失う。



「花恋……?」



そこにいたのが――唯人だったから。