*


「ごめんっ、待たせた……っ」


息を切らしながら唯人が現れた。……待ったって言ってもまだ十数分しか経ってないけど。



「全然待ってないから大丈夫だよ、ていうか急にごめんね」


「ううん、いいのいいの」




「……じゃあ、行きますか」



「そーだね、どこ行く?」


「うーん、カラオケとか?」


最近あんま行けてないし行きたかったんだよね。



「――俺、音痴なんだけど!」


「いーじゃんいーじゃん。行こーぜ」


唯人は反対してたけど、多数決でカラオケに。
……少し申し訳ないなぁ。



「花恋ほんと上手いから、花恋の後に歌える気がしない」


「え〜、そんなことないよ。夢愛すごい上手じゃん」


「まー如月の後は音痴の唯人くんが歌ってくれるから!」


「おい春樹、そこはお前が歌えよ」


「えーだって俺、上手くも下手でもないからつまんないって」


下手ではないと言えるのが春樹らしいっちゃらしいよね。




「……唯人の歌、気になるのになあ」


「えっ」


驚いた表情の唯人。


あれ、もしかして、声に出てた……?
心のなかで言ってたつもりがぁ……なんか恥ずかしい。


「――よし、歌う」



「え、いいの?!やったぁ!」



*



「あー、楽しかったぁ!」


「ね!久しぶりにこんな笑ったかも」


「唯人すげえよ、ほんとに。もはや」



「おい!!こうなるとわかってたから反対してたんだからな!!」

真っ赤な顔の唯人。



「えー、でも結局自分から歌ってたじゃんか。な?」


「そうだよそうだよ」


まあ、その原因は私が心の声漏らしちゃったからなんだけど……。

すごく申し訳なくなってきた。



「なんか、ごめんね……?」


「ううん、いいよ!花恋が楽しんでくれたなら!」


うう……。今きっと顔真っ赤だから見ないで……。



「花恋、顔赤くない?大丈夫?」


「大丈夫だから!顔赤くなんてないから今はこっち見ないで!!」


「ふーん?それならいいけど」


信じていないご様子。まあそうだよね。



「あーいっけない!用事思い出しちゃったー」


「あ、俺もだ。ごめん先帰るわ」


ほんとかい、とツッコみたくなるくらいわかりやすい棒読み。



夢愛が『が・ん・ば・れ』と口パクで伝えてきた。


うん、頑張る!!